ウェールズといえば炭坑で、その歴史についてぼちぼち勉強せねばと思いつつ、今回(も)扱う『三四郎』の三四郎の故郷九州が(熊本がどうなのかよく知らないけど)炭坑の歴史をもっていることはよく知られているけど、私の故郷の山口にもかつて大きな炭坑があったことはあまり知られていないのかもしれない。私の生まれた山口市の隣、宇部市にはかつて炭鉱群があり(67年に閉山)、海底炭田だったので「海水流入事故」が何度か起きて、200人以上死んだりしてるのだが、ちなみにその宇部炭鉱から生じたのが、ユニクロに次ぐ(?)山口の全国区企業、宇部興産である。
で、とりあえず通史的なものを、と探していたらこんなのが出ていたのでめくってみる。
石炭で栄え滅んだ大英帝国―産業革命からサッチャー改革まで (MINERVA西洋史ライブラリー)
- 作者: 山崎勇治
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- メディア: 単行本
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まず、タイトルにもあるが、イギリスが「滅んだ」というのはどういうことか。滅んではいないだろう(笑)。イギリス型の資本主義が斜陽を迎えた、ということであれば、それは単に脱産業化したのであって、脱産業化後の金融資本主義の繁栄、シティの繁栄はどう説明するのか。(というのはちゃんと後半で話題になっているのだから、なおさら「滅んだ」はおかしい。)
それはともかく、後半部の、1984-5年ストライキをめぐる一連の「インタビュー」が特色か。まえがきによれば、サッチャーやトニー・ベンにもインタビューを申し込んだというから、この人、すごい。(残念ながら前者は実現はしなかったが。)しかし、トニー・ベンといった「名のある」人だけでなく、組合活動家、組合活動鎮圧に手を貸した地元警察官なども多角的にインタビューしており、面白そう(というのは、まだそこまで読んでないんだけど)。
あとは、単に知らなくてへえっと思ったのは、日露戦争とウェールズ炭坑の縁。カーディフから輸出されていたので「カーディフ炭」と総称されていた良質の石炭は、バルチック艦隊の重要な動力源で、*1それを確保するための政治的かけひきがあった(らしい)。
*1:ここ、ウソでした。コメ欄参照。