自分のやりたいこととできることは一致しない〜『カラオケ行こ!』(2024)

劇場で見逃し、早速配信で。

合唱部の部長の岡聡実くんが、ひょんなことから、極道者の成田狂児にカラオケに誘われ、組のカラオケ大会に向けて歌のレッスンを頼まれるという荒唐無稽だけれども二人の奇妙な友情がなんともジワジワ来る映画。面白かったのですが、どうも最初の、カラオケに行く下りでの登場人物の心の動きが分からなかったというか、そういう状況になったらもう少し聡実くんにリアクションがあり、コンフリクトがありそうなものの、唯々諾々と状況を受け容れている(ように見える)部分がどうもしっくり来ませんでした。

これはプロットや台本のせいなのか、そもそも日本人の感情表現が薄味であるためかは分かりません。シュールな展開のシュールさを強調するためにああなったのかなとも。原作読んでないんですが、読んだら色々解決しそうな感触もあり。

狂児はX JAPAN「紅」が大好きなのだけど、聡実くんの言う通り、音域が合っていない。カラオケで歌いたい好きな曲と自分に合っている曲はこのようにえてしてズレがちなのだけど、この「自分のやりたいこととできることは必ずしも一致しない」というテーマが、声変わりと新たな旅立ちを迎えた聡実くんの成長物語のテーマにもなっているわけです。そこ、もうちょっと深めて欲しい! 聡実くんの内面、もう少し大事にして、彼にとっての「やりたいこと/できること」が何なのかという情報が欲しい……。

ということで、惜しい映画でした。