ここ二日、授業と会議がつまっている間をぬって来週の準備。この、「間をぬって」というのがだんだん得意になってきているような。いや、それが得意にならないと研究なぞできません。
というわけで、話題の(?)これを読む。
The Contest of Faculties: Philosophy and Theory After Deconstruction
- 作者: Christopher Norris
- 出版社/メーカー: Routledge
- 発売日: 1986/01/01
- メディア: ペーパーバック
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この中のエンプソンおよびド・マン論、'Some Versions of Rhetoric'を。おおまかな論旨はいいのだが、ひとつ大きく気になることが。92ページにあるエンプソンからの引用、かなり重要な引用で、ド・マンがエンプソンに過剰な存在論的重さを読み込んでしまっている、という主張の根拠になっており、ノリスはこの引用から、(エンプソンの論じる)マーヴェル的なものと、ワーズワース的なものの対照を導き出している。
しかし、この引用箇所のもう少し前からエンプソンのテクストを読むと、じつはここはリチャーズの『コールリッジの想像力論』についての議論であって、ノリスはその文脈を消去して引用してしまっている。いかんせんエンプソンのテクスト自体がかなりの迂回をしているので、分かりにくくはあり、私も誤解があるのかもしれないが。それにしても、リチャーズ批判とエンプソン評価のド・マン論文を批判するのに、リチャーズをいやみに取りあげている箇所を引用しつつリチャーズの名を出さないのは、ちょっとまずくはないかい、と。
まあ、あまりこだわりすぎない方がいいのかもしれない。この論文、イーグルトンによるエンプソン論=ド・マン批判(「道化としての批評家」)と力点は違いながらも時代・論旨の点で響き合う。正直、イーグルトンの方が一枚上手だな、という印象。
- 作者: テリー・イーグルトン,Terry Eagleton,大橋洋一,黒瀬恭子,岩崎徹,鈴木聡,道家英穂
- 出版社/メーカー: 平凡社
- 発売日: 1986/12/01
- メディア: 単行本
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