『ハイキュー!!』についての暫定的メモ

どうも映画が公開中の『ハイキュー!!』が気になり始め、とりあえずアニメ版を見始めてますが、これは(昨日ちょうど日本スポーツ社会学会のシンポジウムでテーマになった)スポーツと男性性の表象という意味でとても重要な作品かもしれないと思い始めてます。

まだ全然序盤なのですが、この作品は「チームワーク」を主題とするわけですが、チームワークの重要性への目覚めにいたるプロセスが、登場人物たちの「傷」であることが興味深いところです。つまり、登場人物たちはそれぞれに挫折を抱えており、チームとチームワークの可能性と重要性に気づくことによってその挫折と傷を乗り越えていく。自分の傷に向きあい、お互いをケアしあう男性同士の関係性が主題となっているというのは、とても現代的だなと感じています。

その一方で気になるのは、登場人物たちがある意味でとても優等生的なので、部活の中での先輩後輩の秩序などにとても従順に見えること。先輩後輩なんて関係ねえ、下剋上じゃオラオラみたいな男性性が言外に否定される結果、部活の権威主義的な秩序(そこには有害な男性性の問題が舞い戻り得る)は手つかずになってしまうのか、と、まだ視聴途中ながら感じています。

これ、じつのところ『鬼滅の刃』に感じることに近い。『鬼滅』もまた、男の子同士が褒め合ったりまでしながらケアし合う物語だし、主人公の炭治郎の特長は鬼に対してさえ及ぶ共感力だったりする。ですが、突然に「長男だから我慢できた」というような家父長制が舞い戻る瞬間があり、物語全体は家族主義が貫いていたりする。

これが、アンジェラ・マクロビーが新自由主義とポストフェミニズムの「二重拘束double entanglement」と呼んだものなんだろうな、と思っています。

というのは、まだ序盤を観ただけの感想なので、この後続きを観て、評判の高い映画版になんとかたどり着きたい……。『スラムダンク』とか他のスポーツ漫画との比較も必要になるでしょう。