死の欲動とモダニズム

死の欲動とモダニズム―イギリス戦間期の文学と精神分析

死の欲動とモダニズム―イギリス戦間期の文学と精神分析

 ご恵贈いただきました。ありがとうございます。

 信頼すべき同僚のひとりが、この本について(事情があってすでに読んでいたのだが)、「怒りに満ちた本ですね」という講評をしており、早速(例によって)あとがきから読んだのだが、なるほどと首肯した。「怒りに満ちた」という以外の表現を選ぶなら、「経験に突き動かされた/強いられた」とでも言えばいいのだろうか。文学/理論/歴史という抽象化はいまやそれによって見えるようになるものよりも見えなくなるものの方が多い、と私自身も常々思っているが、遠藤さんはその抽象化に対して正しく怒っている。本書を読んで「何をそんなに怒ってるの?」と思った人は、何かが決定的に見えていない可能性を疑った方がいいと思う。具体的に内容に触れずにこういう物言いをすると「荒れる」だけな気もするが、そう思うので仕方がない。

 ちゃんと読んでからコメントしたいが、とりあえず第一章を読み始めて、文体に驚いている。いつもの「遠藤節」を期待/予期したら、これはちょっと違う。おそらく編集者の仕事がかなり反映されているのだろう。ちょっと読んだ感じだと、それが見事に功を奏しているというか、おそらく、日頃はさまざまな配慮のもとに書かれた結果の「遠藤節」であるものが、その核心だけを削りだしたような危険な感触が文体にある。

 ともかくも、味読いたします。また告知しますが、合評会をやります。