信じる

 『Web英語青年』の連載「21世紀の生のためのキーワード」、最終回です。お題は「信じる」。共著者なので、内容については申し上げません。

 足かけ2年間リレー連載を続けたわけですが、その二年間のちょうど真ん中は「3.11」で分断されています。いや、それを分断と呼んでしまうかどうかということ自体がひとつの難問ですが、というのも今思うと書くべき事は変わらなかったからです。いや、読んでみれば明らかな分断というか切れ目があるかもしれませんが、むしろ「3.11」後にこそ「3.11以前」が、私たちがいったいどのような世界に生きてきたのかがよく分かるようになった(ゆえに、「分からない」ということもよく分かるようになった)部分があるのではないかと思います。

 この連載は、「英米文学研究」をする私たちの使う、というよりむしろ、それのみを使って仕事をしている「ことば」というものをどうやって更新するか、副題にある「新しい批評のことば」をどうやって編み出すかという試行錯誤でした。その結果、内容が個々の「ことば」をめぐるものであると同時に、それを語る「ことば」そのものを作り出す試みとなりました。その点、今使った「更新」「新しい」というのはふさわしくない言葉かもしれません。「用語」ではなく「ことば」を、というのがひとつのキャッチフレーズでしたが、それが意味するのは、新しい用語をひねり出したり解説したりすることではなく、「すでに言われたこと」「すでに為されたこと」を繰り返すのをいとわないことだからです。

 などと感慨にひたっている場合ではなく、積み残した仕事はたくさんあります。連載の経験ゆえに明らかになったやるべき仕事は膨大であると感じています。ですがとりあえずは寄稿してくださったみなさんとお読みくださったみなさんに、またこんな企画を通しておつきあいくださった研究社のHさんに、感謝の意を(勝手に代表してますが)表したいと思います。