テクストブック

 昨日は三田にてイギリス文化史教科書研究会(教科書を研究するわけではありません)。

 経済思想史専門家によるレクチャー。北の国で療養中のtakashimura氏の代打で司会をしたものの、ひきつぎがしっかりしておらず、レクチャーしていただいた先生にはご迷惑をおかけしました。しかし、サルでも分かるように明晰にレクチャーしていただき、ケインズマネタリズムがまるっと分かる、お得な会となりました。

 20年代から30年代、そして70年代にどうして失業率が高まったのかということについては、文学やっている限りは「不況だったからでしょ?」で済ましてしまったりするのだが、その辺のからくりが明確に分かって、なるほどというところ。そこには単なる不況というだけではなく、金利生活者(ケインズの言う非活動階級)の利害を守るための金融政策がはたらいていたと。形式的には20年代から30年代、そして戦後への流れと、80年代から90年代、そして現在への流れは「同じ」であるわけだが、このような形式化はある意味、20世紀全体を身近に感じてもらうには、良いかもしれない。

 しかし、経済学では古典テクストは読まないで、テクストブックでさらうだけ、というのはうっすら知っていたが、昨日伺ったところでは、それはかなり徹底してるのね。そうするときっと、教科書読んだ知識でさらに教科書が再生産される、などということが生じているのではないかと想像するが、だとすればわれわれが作ろうとする「教科書」は、それだけ読んでもう一冊の教科書を書くことができないようなものにするべきだろうか。テクストを読むことを誘発するテクストブック。言うは易し。

 このプロジェクト、「世代交代」が宣言され、どうやらこの後一、二年は重い責務を負うことになりそう。がんばっちゃいます。