第23回冷戦読書会

 こちらの読書会はこれまでここで告知していないような気がして、非常に恣意的ですが、次回こそは参加しようという決意表明代わりに告知です。

第23回冷戦読書会

とき:9月12日(月)15:00-

ところ:一橋大学国際研究館5Fゼミ室2

テクスト:Tim O'Brien, The Nuclear Age

報告者:早坂静

Tim O'BrienのThe Nuclear Age(1985)の中の冷戦期アメリカにおける核による国民管理の批判の分析を通して、アメリカの自由、リベラリズムについて考えます。
 冷戦期の核抑止論に基づいた国民管理と政治の下、アメリカでは国家安全保障問題が最優先とされ、国内の個々の一般市民の
生活や尊厳は二の次とされていたこと、核戦争の脅威の下市民の間には無気力と無力感が広がり核の問題に関しては自由主義的、民主主義的な政治が失われていたこと、市民防衛体制を通して家族・ジェンダー規範が強化され多くの市民が抑圧されていたことといった問題を、O'BrienがThe Nuclear Ageの中で、アメリカ市民のための人間の顔をした自由と平和を求めて検討しているのを確認します。
 さらに、そうした本当の自由と平和を実現するために無視できない問題である、「原子力の平和利用」の過程、すなわち、原子力エネルギーの生産過程、核実験と核廃棄物による環境汚染と市民の健康被害の問題が、いかにO'Brienの物語るアメリカの核の経験には徴候的にしか表れされず、周縁化されているのかを確認します。