恋する

 『Web英語青年』のキーワード連載、越智博美さんによる「恋する」です。

 なんだか、すごいです。鬼気迫る勢いが。というのは大まじめに感心して言っているのですが、前回の「セカイ系」との対話と、そこからかなり踏み込んだ結論、わくわくしながら読んだわけであります。セカイ系の閉域というのは、「二人の恋愛によってセカイを変えたい」という願望と表裏一体。とはいっても変えるべき社会を想像できないから「セカイ」に閉じこもることになるわけですが。(その意味では、『崖の上のポニョ』もセカイ系だよなあ、と思いついたり。)そうだとすれば、セカイ系の裏側で、社会を変えることが幸福の条件になるような恋愛物語が語れないはずはない。その可能性は手放さない。

 実際、見方によっては、21世紀には、19世紀が再来している部分はある。孤児のフィギュアとか疑似家族が再来しているように思えるのは、最近『3月のライオン』を読んだせいか。実際『3月』では、突然に家族をなくし、無縁社会に放り出され、将棋という「自由市場における競争」のみを生きるよすがとする主人公が、人情味あふれる下町の三姉妹の家に「家族」を見いだすわけで、多分に想像的な解決があるわけですが、あれがぐっと来るのは現代ならではだろうな、と(主人公が必要もないのに高校に入り直して、孤立しながらも卒業しようとするのは、「失われた(福祉)社会」を取り戻そうとする懸命な努力に見えて、泣けるのですが)。