帝国・都市・労働者階級文化

Cities of Affluence And Anger: A Literary Geography of Modern Englishness

Cities of Affluence And Anger: A Literary Geography of Modern Englishness

 Jed Estyの本は良かれ悪しかれ大きな影響をおよぼしているが、この本もその議論に参戦するもの。

 20世紀を通した帝国の縮小とそれに反応する形でのイギリス特殊性の追求。これを、階級の要素を強調しつつ論じる。とりあえず第一章(イントロダクション)を読む。第二章以降論じられるのはE. M.フォースター、イヴリン・ウォーヴァージニア・ウルフ、「怒れる若者たち」、ドリス・レッシング、サルマン・ラシュディー。一方に帝国の縮小、もう一方に国内の階級の流動という状況が収斂する場としての都市。特に戦間期から戦後にrural Englandではなくurban EnglandがEnglishnessの核となっていき、それがさらにポストコロニアル文学へと流れこむことが論じられる(らしい)。

 ぱらぱらと見ると、第二章ではフォースターとウォーのカントリー・ハウス小説とともに、先日「三つの磁石」の図を本ブログでも引用したエベネザー・ハワードが論じられているし、第三章は『ダロウェイ夫人』と公園の政策の関係が論じられている(みたい)。楽しみ。

 イントロダクションでは「カルチュラル・スタディーズの源流」たるウィリアムズ、ホガート、トムソンと、それを批判したペリー・アンダーソン、トム・ネアンが論じられ、第一世代による「労働者階級文化」の神話が、イギリス特殊性論として批判された経緯が検証されている(検証されるというより、著者の立場は特殊性論批判)。

 エスティといい、アメリカの学者が(Kallineyという名前はアイルランド系?)、ここのところウィリアムズらのナショナリズムを批判する動機は何なんだろう、ということの方が気になる。アメリカの学者の「インターナショナル・スタイル」にも、ある変容が起きているということなのだろうが。

 何にせよ、この本は関係者のみなさまにはぜひ読んでいただきたい。二章以降も読んでレヴューします。