教科書いろいろ

 なんだか最近、ようやく「ふつう」になってきた感じ。今年の前半はあらゆる意味でバタバタしていて体調も低調だったし、10月のウェールズは楽しくも激しかったし、またここのところ体調は悪かったものの、今週になってにわかに「ああ、毎週同じこと繰り返してるなあ」という感覚が久々に戻ってきた。仕事のうちでも地味な部分はこういう時にこそよく進む(はず)。

 後期のさまざまな授業で使っているテクストから。

Remains of the Day

Remains of the Day

 うーん、やはり、シンパシーをもって扱えない作品を授業でとりあつかうのはそれなりにしんどい。今週は、主人公スティーヴンスやその主人ダーリントン卿のセクシュアリティの問題についてひとくさり。この作品には奇妙な「不在」がいくつかある。(サザーランドの指摘するスエズ戦争の不在もそのひとつ。)もうひとつ、「規範的にはそこにいるべき女性の不在」が際だつ。スティーヴンスの母、ダーリントン卿の家族(妻? 彼は独身? この点、よく思い出せないのでこの後チェックするが、まったく触れられていないような)。

 で、今日扱った範囲では、ダーリントン卿が、ドイツ人の友人であるブレマン氏が第一次世界大戦後に没落し自殺したことから親ドイツ的政策に走ったというくだりで、「ダーリントン卿とブレマン氏の間柄って、あやしいよねえ。それを言ったらスティーヴンスのセクシュアリティってどうなってんの?」という疑問を呈しつつ、セジウィックの『男同士の絆』を5分で解説(脚色してます)。

ベンヤミン・コレクション〈1〉近代の意味 (ちくま学芸文庫)

ベンヤミン・コレクション〈1〉近代の意味 (ちくま学芸文庫)

 明日の学部ゼミに向けて「複製技術論」を再読。5回目くらいか。今回気づいたのは、今まで碌に注を読んでいなかったということ。この論文の注、結構興奮します。これを読んだ後は、学生の要望にホイホイ応えて『無為の共同体―哲学を問い直す分有の思考』を読む予定。

The Theory of the Novel

The Theory of the Novel

 明日の大学院ゼミに向けて。日本語訳でしか読んでなかったのを、今回はより平明な英語訳で。うーん、これは、意外と難しいことを言ってるなあ。特に第二章のドラマとエピックに関する部分は頭の中の再整理が必要。

 ところで鬼が笑う来年度の話。英語の授業はもっと機械的にやれる教科書を選ぼうと反省。それ以外の様々な講義・ゼミでは下記のテクストを検討中。

Resistance

Resistance

The Dark Philosophers (Library of Wales)

The Dark Philosophers (Library of Wales)

Border Country (Library of Wales)

Border Country (Library of Wales)

Culture and Society, 1780-1950

Culture and Society, 1780-1950

 ここまではウェールズ・シフト。ちなみに、ウェールズに行ってから完全にウェールズかぶれになってしまい、Library of Walesを全巻購入という暴挙に出たのだが、その中にEducational Resource Pack (Library of Wales)なるものがあり、なんだろうと思いつつ無差別に注文してみると、シリーズの中からいくつかをピックアップして、大学の講義で使えるような「エクササイズ」をまとめたものでした。いや、熱心です。

 あとは、大学院ゼミでは教育的配慮(?)からこれかな……。

Cities of Affluence And Anger: A Literary Geography of Modern Englishness

Cities of Affluence And Anger: A Literary Geography of Modern Englishness