難民の遠吠え

 「全国1000万の団塊ジュニアよ、立ち上がれ!」という勇ましい帯文句に、思わずまた手にとってしまった三浦展本。しかし、帯文句のようには元気の出る本ではない。いかに我々が「難民」であるかがよく分かるだけ(だから、タイトルは間違ってないのだけど)。

 かねがね私もその一員である「団塊ジュニア」の集団性というものを提示してくれる言葉に飢えているわけだが、団塊ジュニアにはそもそも世代自意識も薄ければ、客観的な世代性も薄い。他の「**世代」と比べて、歴史的事件との結びつきが自明ではないからだ。

 世代性があるとすれば、それはその名が示すとおり、「団塊」であること。つまり、人口が多いこと。従って、巨大なマーケティング対象としての世代となる。三浦展はマーケットリサーチャーであって、その論述の基盤にあるのはやはり、マーケティング対象としての団塊ジュニアである。従って、「マーケティング対象としての人口集団」という枠組みそのものは破壊してくれない。内在的でもないし。まあ、いろんなデータは面白いし、「団塊ジュニア」を正面切って取り扱う著述家は他に見あたらないという一事によって重要なのだが(あとがきで認めているとおり、彼の本はほかならぬ団塊ジュニア世代に売れているらしいので、団塊ジュニアを「他者」として扱う、つまり他の世代が参考書として読む団塊ジュニア論とは一線を画すのかもしれない)。それでもやはり、帯文句は完全に「看板に偽りあり」なので、お金を返していただきたい。