イングランド性・京都性

Landscape and Englishness (Picturing History)

Landscape and Englishness (Picturing History)

 すでにウルフ協会の会誌で書評されなどしているので、新たに紹介というわけではないが、いまさら読む。こりゃ、いい本だ。大戦間期に起こった'rural England'の保存運動。ごく近代的な症候としての有機体論。「イングランド的風景」の設計・保存の理想と、(ほとんどファシズム的な)「健康なる身体・市民生活」へのオブセッションとの関係。産業社会と有機体的社会の想像的対立(これに、無秩序と秩序、醜と美、悪と善といった対立が重ねられる)というのは別に大戦間期に限った話ではないのではあるが。とにかく小ネタがいっぱい拾える本。

 風景という伝統の創造といえば、私の住む京都はその代表格だろう。「京都」という風景の近代における創造と、その「国民」の創造との関係を論じた論文。

佐藤守弘「伝統の地政学──世紀転換期における京都性の構築」(『美術京都』35号)

 日常的居住の場所としての京都と、想像的トポグラフィ上の京都。この乖離(と不可能な結合)を、1895年創刊の日本初の総合誌『太陽』にさかのぼって分析してくれる。