告知

 先日ちょっと触れました、「新自由主義読書会」のご案内です。参加自由です。「お知り合いの方々に」とありますがお知り合いではない方でもぜひどうぞ。いろいろ書いてありますが、方向性はあってなきがごとし、参加者次第ということになろうかと思いますので(新自由主義を言祝ぐ会、には一応ならないとは思いますが)、ぜひ。

第1回 新自由主義読書会

9月4日(金)
午後3時より
一橋大学国際研究館5階 ゼミ室2

テキスト David Harvey, A Brief History of Neoliberalism (2005)
    『新自由主義──その歴史的展開と現在』渡辺治監訳(作品社、2007年)
レポーター 三浦玲一

新自由主義ネオリベラリズムについての読書会を開こうと思います。まずはお知り合いの方々にお知らせしますが、テーマがテーマなので、できるだけインターディシプリナリーに、いろいろな方に来ていただければ嬉しく思っております。

三浦の疑問の出発点は、われわれは、ネオリベラリズム的な世界観の外にどうやれば立てるのか、というものです。たとえば、年功序列による昇進人事より、業績を正しく評価して、能力ある若手を積極的に登用する人事が正しいと考えるとき、それは、ネオリベラリズムではないのか(笑)? たとえば、非正規的な雇用者に対するセーフティネットを拡充せよという要求は、ネオリベラリズムに対する処方的な対策にはなりはする(それはそれで有意義ではある)けれど、基本的には、ネオリベラルな世界観を前提的に認めているのではないか?

読書会の見通しは、大きく言うと、

モダニズムポストモダニズム
冷戦/ポスト冷戦
フォーディズム/ポストフォーディズム
包摂型社会/排除型社会

といった、現代を記述するための種々の二項対立的な時代論、文化論にリベラリズムネオリベラリズムという項を付け足すことを通じて、その全体像を再検討するということになります。上に挙げた例は、当然ながら、各々が明確に対応するものでもありませんし、その図式そのものが完全に認められたものとも言えないでしょう。これらの関係と、それらの区分の手続きそのものを、ネオリベラリズムの概念化を通じて、現在を批判的にとらえようとする視座から、再検討しようというのが目標です。

その意味では、新自由主義読書会は、同時に、新自由主義の文化についての読書会でもあります。ネオリベラリズムの議論においては、それを一枚岩的な政治体制として見るよりも、その名で呼ばれる種々の政治的傾向を、支え、保全し、支持する「文化」の問題も、しばしば議論されてます。最初に述べました、ネオリベラリズムを批判する視座をわれわれはどのように獲得できるかという問題を、文化の問題から考察しようという試みです。

この再検討は、言い方をかえると、ネオリベラリズムの系譜の再検討ということになります。系譜というのは必ずしも時代区分ということだけではなく、さまざまな言説領域やイデオロギー編成の連続性と断絶の問題であり、それらを再検討してあらたなネオリベラリズム像を記述すること自体が、「現在とは少しだけ違う現在」を想像する助けになると信じます。

第一回は、おそらく、現在のネオリベラリズム研究の出発点のひとつと言って良いであろう、ハーヴェイの『新自由主義』をレポートします。この読書会の方針の説明と、ハーヴェイの本の要旨説明をやるつもりです。一応、英語版をテキストとしますが、この本の邦訳は、日本の新自由主義状況についてのかなり長い解説と、詳細な注がついておりますので、適宜ご参照ください。

A Brief History of Neoliberalism

A Brief History of Neoliberalism

新自由主義―その歴史的展開と現在

新自由主義―その歴史的展開と現在