届かない手紙

 カード会社から、「メールアドレスを変更したら届けてください」と注意を喚起するメール。このメールは、メールアドレスを変更して届けていない人たち、つまり一番肝心なメッセージの宛先に届かないのではないのかい。

 イギリス文化の授業は『愛と戦いのイギリス文化史―1900‐1950年』の第8章。うーむ、この章は決定的に誤読されやすいかもしれない。案の定、担当した学生は、爆撃を受けた戦時ロンドンに「享楽」と「絶望/不安」の「二面性」があった、とまとめてくる。

 そうではなくて、精神分析を通過してみると、不安とは過剰なリビドーが自己に向けられたものであって、享楽と不安は別々のものという意味での二面性ではなく、「表裏一体」という意味なのですよ、したがって幽霊物語が乱立したのは、そのようなリビドーの過剰を幽霊という形象によって昇華しようとしているのであって……と説明するが理解がゆきとどいたかどうかは不明。学生にとってフロイトは前提じゃないしね。まあこんなものでしょうか。

 そういえば、担当する章を自由に選ばせたら、第二部の「セクシュアリティ・女・男」はこの8章を除いてみごとに売れ残ってしまったのだが、ウチの学生のこの独特の「嗅覚」のあり方はなんなんだろう、と思ったり思わなかったり。ある意味で一番「おいしい」ところなのにねえ。

 そしてようやく、月末締切(!)の論文に手をつける。去年秋に読んだエンプソン論のペーパーを読み返し、ああ、これは先日の未来性の議論にがっつり接続可能だ、とため息。やるしかないか。