ニュータウン病

 早朝から夕方まで、ほぼ何もせず座っている仕事。これまででも屈指の虚しい一日であった。ちなみに、今日全国の大学教員がたずさわったかもしれない仕事とはちょっと違います。

 で、虚しさの度合いを少しでも下げようと、合間読書。

Never Had It So Good: A History of Britain from Suez to the Beatles

Never Had It So Good: A History of Britain from Suez to the Beatles

 続き。第4章'The Affluent Society'に入って、政治家たちの偉人変人伝をようやく脱出。文化の話に。(しかし、イーノック・パウエルの変人ぶりはすごいなあ。)

 ひとつ、歴史観の面で大きな問題が提出されている。54年に配給制度もなくなり、affluentな消費社会が出現した、という断絶のナラティヴに対して、いや、消費社会化は30年代から始まっていた、という連続性のナラティヴ。この本はこういった問題をあまり深く掘り下げる類のものではないので、曖昧なまま先に進んでしまうけど、重要な問題である。

 相変わらず、時代に関する神話というか、popular conceptionというか、それをいったん提示してはひっくり返すという手法。ミュージック・ホールは戦後には完全に死に絶えた、という神話に対して、いやそうでもないよ、とか。

 同じような手続きでトピックとしても面白かったのは、戦後のニュータウン開発が進む中、ニュータウン住人がノイローゼになるという話。クローリーニュータウンの名をとって「クローリー・ノイローゼ」。日本での団地病を思いおこすし、あと、『めぐり会う時間たち』のアメリカ60年代も思い出す。しかし、それをニュータウンのイメージとするのは間違いで、実際はニュータウン住人はaffluentな生活を楽しんでたよ、と。