新キーワード事典

New Keywords: A Revised Vocabulary of Culture and Society

New Keywords: A Revised Vocabulary of Culture and Society

 が、届く。もちろんレイモンド・ウィリアムズの『キーワード辞典』の現代版。カルチュラル・スタディーズの領袖たちの編集によるものであり、それだけで位置づけはだいたい想像できようものだが、これはなかなかに面白い本のようだ。

 ちなみにめぼしい著者を挙げておくと、Jonathan Crary, Paul du Gay, W. J. T. Mitchell, Jacqueline Rose, Naoki Sakai, Jeffrey Weeks...と、まあ要はセレブな面々。これだけセレブなんだから、目次に各項目の著者名も載せてほしかったな。

 各項目を読む楽しみはあとに残しておくとして、こういう本はどういう項目を挙げているかでその主張、というか、アイデンティティが問われる。目次を眺めると、ウィリアムズと重複する項目もたくさんあるが、当然削除や追加がある。alienationはないがaudienceはある。charityはないが celebrityはある。existentialはないがeverydayはある。などなど。

 しかし、真価を見極めるには重複した項目がどう書かれているかを見るべきだろう。例えばTony Bennettによるcultureの項目は、ほかならぬウィリアムズへの言及に満ちているが、どうもそこには「相対主義化した」ウィリアムズ像が構築されていて、'a whole way of life'と言うウィリアムズの「ヤバさ」はうち消されてしまっている。

 また、概念をフィロロジカルに追っていって脱構築するといったウィリアムズ独特の戦略は、当然反復されてはいない。そりゃ、反復したって滑稽になるだけだが、そうは言ってもウィリアムズの戦略の単独性と比較したときに、どうしても「薄まった」感じがしてしまうのは仕方ないだろうか。

 しかし、ここのところ「辞書」的仕事をしていたので(もうすぐ出ます)、もっと早く入手しておけばよかった、と後悔しきり。