暗く楽しいウェールズ文学

 ゲラゲラ、ゲラ。というわけで、ゲラの赤入れは「ぶれ」を防ぐためにも一気にやるべきだという信念のもと、でも大掃除なんかもしながら、または子供をたまどー(今年三回目)や釣り堀つきの魚料理屋(居酒屋?)に連れていったりしながらゲラにとり組む日々。年末年始はこれに終始するか。

 とはいえ久々にじっくり腰を据えて読書もできるわけで、これを読み始める。

The Dark Philosophers (Library of Wales)

The Dark Philosophers (Library of Wales)

 Gwyn Thomasは1913年、Rhondda Valley(南ウェールズの炭坑地帯)のPorth生まれ。オクスフォードでスペイン文学を学んだのち、ウェールズに戻って教師となる。やがて教師の職を辞して小説家となる。1981年死去。

 イントロダクションの表現では、「もうひとりのThomas」(もうひとりはもちろんDylan Thomas)といわれるくらいの大物のはずなのだが、残念ながらDylanと比べて読まれていない人。

 この本は三編の中編小説からなっており(1946年出版)、とりあえず最初の'Oscar'を読了。

 ウェールズの「緑の谷」のロマン化が鼻についたOwen Sheersの小説と比べ、これはその正反対で、ウェールズの炭坑町の暗黒面を描く。タイトルになっているOscarは炭坑を所有する地元の名士であり、醜く太って酒池肉林をほしいままにする人物。主人公はその侍従のようなことをしている青年。しかし、「ウェールズの裏側/真の姿」をえがくリアリズム小説というわけではなく、(ダークな)ユーモアにあふれ、また少々マジック・リアリズム的なおもむきさえある作品。「ウェールズジョイス」と言ったら言い過ぎか(ユーモアのセンスではジョイスも足下に及ばないぐらいだが)。ちょっとやりすぎで気分が悪くなるくだりもありつつ、面白く読む。でも、これは授業じゃ使えないか。クレーム出ちゃいそう。ともかくも続きを読もう。