楽しいウェールズ文学

Resistance

Resistance

 1944年、ノルマンディー上陸作戦、失敗。ドイツ軍の反攻にイギリス軍は潰走。ロンドン陥落も間近。いっぽう、南ウェールズの山間の村落オールチョンのある朝。女たちが目覚めてみると、村の男たちは一人残らず姿を消していた。そして、その村への哨戒作戦を命じられた、戦争に疲弊したドイツ軍の隊長アルブレヒト……。

 とまあ、以上のような設定だけでいかにも面白そうな偽史ものの小説。作者のOwen Sheersはウェールズの詩人で、小説デビュー作。この、舞台になっている村はウィリアムズが生まれたパンディからもう少し北東の方の山中に入ったあたりの、パンディよりさらなる田舎。(Border Countryで描かれる、ウィリアムズの父が働いた今はなきパンディ駅も登場する。血なまぐさい場面でですが。)

 上記のようないかにも面白そうな設定を、最終的には生かし切れないストーリー展開であることは否めないし、ウェールズの田舎のパストラル化には、映画の『ウェールズの山』に近いものを感じるが、エンターテイメント性という意味では「英語ウェールズ文学」への導入としてはいい作品か。映画化も予定されてるし。