メタカル

Culture/Metaculture (The New Critical Idiom)

Culture/Metaculture (The New Critical Idiom)

 昨日はイギリス文化教科書プロジェクト研究会。わたしがこの本を解題。解題というほどうまく咀嚼して提示できなかったが、なにしろこの本、入門書シリーズの一冊とは思えないほど晦渋で濃密。書きこみを見ると(読み通した本の最後には日付をメモしてある)、5年前に一度読んでいるのだが、その時も皮相な理解しかしてなかったに違いない。今回も部分的には飲み込めずじまい。

 結論部でMulhernが提示するcultural politicsというのは、決して彼の言うKulturkritikからもpopulismからも完全に離脱したものではあるまい。したがって「メタカルチャー」からも。というか、「文化」を語る以上、そこから「抜けだす」ことは不可能であり、Mulhernがそう考えていて私が同意したように、WilliamsはKulturkritikとpopulismのどちらにも「ベッタリ」にならなかった例外的存在なわけだ。それは、Williamsの著作がいっぽうでLeavis主義、もういっぽうで左派主流派、両者への介入を意図したものだったからだろう。

 その点、Stefan Colliniの「メタカルチャーについて語るMulhernの著作もメタカルチャーだ」という批判は批判になっていないのである。メタカルチャーそれ自体が「ダメ」といっているわけじゃないんだから。

 さて、これにていよいよ夏休み体勢(この後オープンキャンパスやらなにやらあった去年までより2週間ばかり早く)。うずたかく積み上げられた仕事のどこからやっつけるか。あ、その前に採点しなくちゃ。