「重点化」の果てに

 朝刊の一面に、文科省が国立大学の次期中期目標の項目として、大学院博士課程の定員減を盛り込んだことが報じられている。各大学の事情を考慮して自主性に任せるが、定員減を達成した大学には交付金を手厚くすると。

 ずっと言われ続けているポスドク問題への対策ということになるが、これは解決策ではなく、焼け石に苦し紛れの水をちょっとかけてみた、というところだろう。定員を減らすということはすなわち教職員のポストを減らすということであり(大学院のみのところでは特に深刻な問題)、それに対して少し交付金を手厚くしたところで、まさに「焼け石に水」なのである。

 裏にあるメッセージとしては、大学院を作ってみたものの定員を確保できず、大学全体としても交付金を減らされて困り果てている地方国立大学の鼻先にニンジンをぶら下げて、「とりあえずこのニンジンあげるからさ、意地はってないで規模縮小しなよ(できればいずれ統廃合しなよ)」ということである。それでなくとも交付金を削られている大学にとっては、「自主性」もへったくれもあるまい。

 一番大きな問題は、これでポストは総体的には減る(どちらにしろ減るけど、それを加速させる)わけで、すでに生みだされた現ポスドクの救済策にはなっていないどころかその苦境をさらに助長するという点である。