- 作者: ジェームズ・ブリッシュ,井上一夫
- 出版社/メーカー: 東京創元新社
- 発売日: 1967
- メディア: 文庫
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帰省のお供。
レイモンド・ウィリアムズのSF論で触れられていて、三月のシンポまでに読もうと入手していたのに読めずじまいだったもの。勢い、ここで描かれる惑星「リチア」が、いかなるユートピアとして描かれるのかという点に感心が集まる。
ブリッシュはカトリック信者で、この小説はカトリシズムの/と共同体という問題意識が色濃い。で、リチアは単なる「パラダイス」でもなければ、邦題にある「悪魔の星」、つまり悪魔が人間を誘惑するためにつくった楽園でもない、第三項であると作者自身の言葉で説明されるのだが(その意味で邦題はまずいのだが)、その内実ははっきり言って謎のままであり、ちょっとついていけない感じもあり。重要な細部が説明されないままになってしまうところが多く、ちょとつらいところ。
ウィリアムズに帰ると、彼はこの小説を単なるユートピアものでもなく、ディストピアものでもない、「宇宙人類学」なるカテゴリーに入れているが、ほとんどそれに説明を加えてくれない。まあ、リチアがユートピアでもディストピアでもないという点は、確かにその通りで、ウィリアムズはそのどちらかに、「忍耐」を欠いたかたちで陥ることのない小説として評価するのだろう。