続エムプソン

 先のエントリーに書いたエンプソンの論文は"Proletarian Literature"の間違いでした。ところで、それが発表された『新英米文学』という雑誌と、それを発行した新英米文学社の活動については、こちらの論文を参照。

村山淳彦 「元祖『新英米文学』賛江」 『New Perspective』 184 (Autumn/Winter 2007): 14-23

 『新英米文学』は1932年2月から1933年12月まで、2年足らずのみ発行された雑誌で、「MEL Group」という(当時の)現代文学の研究会を母体として誕生したそうだ。第二号から連載された座談会のメンバー(つまり雑誌の主要メンバー)の名を連ねておくと、高垣松雄、宮島新三郎、西脇順三郎、滝口直太郎、西川正身小野建人。

 私のような、ちょっと昔のことは知らない人間にとっては、この雑誌で左翼文学とモダニズム文学が矛盾なく共存している様は新鮮である。このグループは、主流の英文学に対抗する意味で同時代のモダニズム文学を紹介していたわけであり(岩波文庫版の『ユリシーズ』など)、それとプロレタリア文学は同一平面上にあった、と。

 この雑誌の廃刊についてはその経緯は不明で、おそらくプロレタリア文学弾圧の中で(小林多喜二の拷問死は1933年2月)、何らかの圧力があったのではないかとのこと。

 でまあ、そのような誌上にエンプソン論文は発表されているわけだ。