宇宙船***号

Non-Stop (Millennium SF Masterworks S)

Non-Stop (Millennium SF Masterworks S)

 ディックから気分転換に。以下ネタバレ注意。

 ブライアン・オールディスの処女作(1958年)だが、なぜか訳されていない。非常に面白いのだが。見捨てられた宇宙船の中に形成された部族社会と、自分たちの世界の「真実の発見」というあたり、最近のマンガにもいくつか例の見いだせる道具立て。例えば……

風の谷のナウシカ 1 (アニメージュコミックスワイド判)

風の谷のナウシカ 1 (アニメージュコミックスワイド判)

これは言うまでもなく、そこから影響を受けているらしき

暁星記(1) (モーニング KC)

暁星記(1) (モーニング KC)

これとか、

BLAME!(1) (アフタヌーンKC)

BLAME!(1) (アフタヌーンKC)

これもそうだな。

 オールディス以前に同型プロットの先行テクストはあるのかしら?

 最後に、宇宙船の中の社会でフィールドワークをする人類学者が出てくるあたりで、(ポスト)コロニアルの問題圏にぐっと傾斜していく。新たな地球を探索に出かけた宇宙船、「植民地」で感染した疫病、実験室としての隔離、反乱、解放(?)……コンラッド『闇の奥』、バラード『結晶世界』とならんで、その地政学的想像力という点で興味深い作品。