心臓ピクピク

 久々に大学で業務。

 午前中はAEDのレクチャー。AEDとは、要は電気ショックで停止した心臓を蘇生させるアレで、最近医者や救急隊員以外でも使えるようになった。

 しかし、実は「停止した心臓を蘇生させる」というのは不正確で、実際は「細動」の状態(心電図では細かく波打っていて、鼓動のない状態)を、完全に止めるためのものらしい。つまり、あの機械は心臓を一旦完全に止めるためのもの。うーん、恐ろしい。

 午後は就職コンサルタントによる教職員向けの講演会。リクルートにいた人で、現在は独立してコンサルタントをやっているそうだ。

 最初は例の「自分探し」「自己実現」話で、雲行きがあやしいかと思ったらそうでもなく、結局就職のためのトレーニングとは、ごく基本的なコミュニケーション能力の養成だということで、ふむふむと聞く(彼は「反応力」「愛嬌力」とかいう奇異な言葉で語っていたが、わざわざ「〜力」と細分化するまでもない話)。

 見知らぬ人に対しては、まず挨拶。相手の話をよく聞き、相手の要望や、自分と相手が共有している文脈を読む。こちらが話す際には、自己の相手に対する立場を客観的に理解した上で語る……

 これまで幾度か述べている、「空気を読む能力」ということだ。

 講演者はいくつかの大学で学生向けのコンサルティングや「キャリアデザイン」の講義を行っているそうであるが、聞けば聞くほど彼のやっていることとは、大文字の〈教育〉にほかならないことが分かる。

 さらには、彼は「資格」だとか「スキル」だとかいうことを一言たりとも語らない。そんなものよりも、上記のような対人能力をビルドインすることの方が何倍も重要だということだろう。