村上龍よ

 夜、寝ようと思って酔っぱらい始めたろに『カンブリア宮殿』が始まって、毎回毎回これでもかとばかりに新自由主義を礼賛するのだが、思わず見てしまう私。

 昨日は「いま元気な企業」の新入社員研修を特集していたのだが、そのなかでもマクドナルドとニトリの研修が好対照をなしていておもしろかった。一言でいえば、マクドナルドはポストフォーディズムニトリフォーディズムである。*1マクドナルドは、従業員の内面を規律化してその生を企業に奉仕させることを、はなから放棄している。研修では「砂漠でのサヴァイヴァルゲーム」みたいな課題を新入社員に与え、新入社員はこのうえなく楽しそうにそれに参加する。また、ニンテンドーのDSを使った社員教育にしても、「ゲーム感覚」どころかゲームそのもので、気づいたら仕事を覚えているという仕組み。これはまさに、先日読んだ本の「環境管理型権力」そのものである。そこでは不思議なことに従業員が「お客様」化する。おそらく、マクドナルドとしては、店に来る客と同じくらいの回転率で従業員も出入りしてもらえばいいのだろう。その辺、徹底している。

 それに対するニトリは、もう笑っちゃうくらいの福祉国家型企業というか、生政治的企業というか。とりあえず軍隊式・体育会的に、「全体、起立」を何度もさせることで規律をたたきこむ(って、シャレじゃないよ)。さらに、80歳になるまでの自分のライフプランを考えさせる。まさに終身雇用型・フォーディズム的な、労働者の内面と生の全体を規範化するようなやり方。(で、実際ニトリが人生を保障してくれるのかは知りませんが。)

 オチはCMで、ニトリがスポンサーじゃん、というものだったが。

 しかし村上龍、この番組はどういうつもりでやってるんだろう。この人にアイロニーは求められない気もするが、新自由主義の典型をアホみたいに礼賛することで、その裏側へ突き抜けちゃおうみたいな意図があるんだかないんだか。ないんだろうが。

*1:よく考えると、マクドナルドは労働者に「自律性」を求めるのではなく、環境を操作することによって労働者が気づけば自律的な動きをしてしまうことを狙っているわけで、これは「ネオ・フォーディズム」とでも呼ぶべきか。