あの頃は良かった〜ブロークバック山編

 先月『真夜中のカーボーイ』を観て、そういえばカウボーイのセクシュアリティといえばこれがあるな、と思ったら、その先月の1月22日に、主演のヒース・レジャー睡眠薬などの過剰摂取で亡くなったとのこと(享年28歳)。

 1960年代、ワイオミング州ブロークバック・マウンテン。むやみやたらに美しい風景の中、羊番の仕事で山に入った二人のカウボーイ、イニスとジャックがひと夏の愛をはぐくむ。別れた二人はそれぞれの結婚生活をだらだらと続けるのだが、あの激しい「初恋」が忘れられず……

 というわけで(映画評は読んでいないが)、「ワイオミング州のゲイのカウボーイの話」なのか、そうではなく「普遍的な愛の物語」なのか、という論争がどうせ起こっているのだろう。後者として観る要素は全てそろっているわけですよ。リアルで憂鬱な結婚生活の中、「初恋の人」が忘れられないオッサンの話だとすれば。「むやみやたらに美しい風景」もその重要な要素(恋をすると世界の全ては輝くのです──それに対し、日常生活の風景は故意に色あせた映像になっており、その辺は映画の作りとしてはオーソドックスというか、文法通り)。

 DVDのパッケージの宣伝文句(「愛の物語」「はじまりは、純粋な友情の芽生えからだった」)は、もちろん後者の立場を取りつつ、かつホモソーシャリティとホモセクシュアリティの境界はあくまで保存しようとするわけだが、この映画の肝はそれらが地続きだということでして。「普遍的な愛の物語」ではなく、「愛が普遍的である物語」なんですよ。

 ところで、イニスとジャックは「釣りに行く」と家族を騙して逢瀬を重ねるのだが、「男二人で釣りに行く」映画っていくつかなかたっけ? とひっかかる。ああ、『釣りバカ日誌』か。釣りに関する映画といえば『リバー・ランズ・スルー・イット』が印象に残っているが、あれは兄弟だったっけ。