あの頃は良かった〜冷戦編

 Never Had It So Good: A History of Britain from Suez to the Beatlesをちびちびと読み進めていて、非常になつかしいものに出会った。

 核軍拡競争と反核運動を扱う章で、SFや映画、演劇に第三次世界大戦の恐怖がいかに影をおとしたか、という話の中で出てくる、John BowenのAfter the Rain(1966)という戯曲(小説版は1958年)。マイナーなのでまあ誰も知らないと思うが、私、学生時代にこれをやったのである。

 というのは、いわゆるESS(私の出た大学では「国際部」というセンスにみちあふれた名前。まあ、ESS=English Speaking Societyというのも大概だが)で、英語劇をやっており、年一回の、他大学とのコンテストの台本に選んだのである(ちなみに私は役者ではなく舞台監督)。

 それ以来、英文学やっててもJohn Bowenなんて名前についぞ出会うことはなかった。結局歴史書で再会することになるとは。いやー、なつかしい。

 この芝居、降り止まぬ雨の結果世界は洪水の下に沈んでしまい、生き残りが「ノアの箱船」よろしく船にのっているが、その中のリーダーがキレちゃって、「神」を僭称して恐怖支配を始めて云々、というアポカリプスもので、まあSandbrookの言うとおり(どうやら作品を読んではいないようだが)冷戦期の核戦争に対する恐怖心から出た作品なわけだ。

Plays One: After the Rain/the Disorderly Women/Little Boxes/Singles (Oberon Book)

Plays One: After the Rain/the Disorderly Women/Little Boxes/Singles (Oberon Book)

 個人的経験では、子供の頃はまだこのような「冷戦下の想像力」の残滓があったかなあ。SF的な作品が、いかに冷戦から想像力を受けとっていたか、というのは言わずもがなだが、ポスト冷戦のSFはどうなったか、と考えると、ひとつはサイバーパンクでいわば「内向」し、もうひとつの路線としてはロビンスンのようなハード・リアリズムに行くという感じか。『スター・ウォーズ』シリーズは冷戦とポスト冷戦をまたいで制作され、さらに物語の時系列としては逆になってしまった点が非常に面白いのだが。

 あ、いや、なつかしい、という感慨を記したかっただけなんですけどね。でもちょっと今日のタイトルにあるような不穏なキャッチフレーズを思いついたりして。