被害者を非難する

 いつの間にか第5巻が出ていたのであわてて目を通す。このシリーズ、なんといっても「20世紀」であることがミソで、20世紀を、それもその後半を「現代」ではなく「歴史」としてとらえ返していく作業(文学史でも盛んになりつつある兆しが見える)の価値ある成果だろう。

 とりあえず第二章の「多民族・多文化国家イギリス」が有り難い。

 ところで、コラムに「英語帝国主義論」というのがあり、誰かと思えば斎藤兆史ポストコロニアル作家の名を挙げて(ラジャ・ラオ、チヌア・アチェベ、グギ・ワ・ジオンゴ)、英語で書くことを正当化して「結果的に英語帝国主義を助長している」ってそりゃ暴論だろう。というか、グギ・ワ・ジオンゴは英語で書くのをやめてギクユ〔キクユ〕語での創作活動をしているのだから(自分で英語に訳したりもするが)、単純に間違い。

 それはともかく、残るは第4巻。楽しみにしてます。