イグゼンプション

 exemptという言葉は、「義務や拘束から除外/解放されること」だと思っていたら、ちょっと混乱させられた。

 恥ずかしながら「ホワイトカラー・エグゼンプション」という言葉を初めて聞いたのだが、その対象になることをexemptionと呼べるのか、と。

 多分、法律の規制からの適用除外のことをexemptionというのだろうが、やはり何かおかしい。だって、自分がその対象となったとして「exemptされた」とは思わないだろうから。

 おかしいと思っていたら、どうやら私のexemptという言葉の理解は間違っていなかったらしく、ただこの法制の名称に関してお人好しだっただけだと分かった。つまり、雇用者側の立場で見ればいいのだ。できれば労働者には24時間働かせたいが、労基法がそれを規制している、その規制からexemptされるのだ、と。

 これほど開き直った、恐ろしい法律の名称は他に大逆罪とか国家総動員法くらいか。

 これが実現したらその結果はひとつ。若年雇用の低下である。

 だって、例えば5人の従業員が週40時間で100の仕事をしており、2人が'exempt'されるとして、私が社長さんならその2人に60時間、いや、80時間働かせて残りの3人のうち1人か2人の首を切るだろう。実際は首を切るのは難しいので、新規雇用を抑制するだろう。そうすれば同じ100の仕事をより低い人件費でできる。

 いや、そうではなくて、管理職への残業代が浮いて、人件費が浮いた分雇用が促進されるのだ、という反論もあるのだろうか。

 そんな甘言にだまされるほど私はお人好しではない。単純な話、これまた私が社長さんだとして、この法律をそのようには使わないだろう、と断言できるから。

 どうせホワイトカラー・エグゼンプションなどという議論が浮上したのは、「財界」ってやつの後押しなのだろうが、大量の失業者がいる一方で働き盛りを過ぎた管理職級の人びとが血を流して働いている、そんな風景を現出させて本当に「利」があると考えているのだろうか。1年2年といった短期的ヴィジョンでは利があるだろうが、30年後は? そうか、自分たちはもう死んでるから関係ないってわけね。