飲酒→自殺?

 以下のような記事に遭遇した。

酒量多いと自殺リスク倍増 厚労省研究班が調査

 週1回以上飲酒し1日当たりの飲酒量が日本酒3合以上に相当する男性は、時々(月に1−3回)飲酒する程度という男性に比べ自殺の危険性が2・3倍とした大規模疫学調査の結果を、厚生労働省研究班(主任研究者・津金昌一郎国立がんセンター予防研究部長)が1日、英医学誌に発表した。
 日本酒3合はアルコールに換算すると59グラムで、ビールなら大瓶3本、ウイスキーならダブル3杯に相当。自殺リスクは飲酒量が多いほど高まる傾向がある一方、「全く飲まない」男性のリスクも2・3倍だった。
 研究班は「飲まない人で高い理由は不明だが、酒量を適度に減らすことが自殺防止に役立つということは言えそうだ」としている。
共同通信

 確か、喫煙についても同じような疫学による研究報告があったと記憶している。この記事だけ読むと、首をかしげざるを得ない。この記事の論理に従えば、飲酒が自殺の「原因」なわけだが、そうなのか。単に、証明されているのは「自殺者の中にアルコール依存者が多い」ということだけであって、飲酒が自殺の誘因であるということは何も証明されていないのだが。

 経験的には、自殺の因子が何かあるとして(とりあえずそれは括弧にいれておく)、それが「自殺」という表現を得たか、「飲酒」という表現を得たか、またはその両方か、というだけであるように思えるのだが。そう考えると、全く飲まない男性の自殺リスクが高いというのは当たり前であって(飲酒という表現の回路を持たないのだから)、「理由は不明」という研究班の言葉には「全然人間が分かってないなあ」という感想と同時に「論理学の基礎でも勉強し直したら?」という感想を抱かざるをえない。

 ちなみに、同じような(破綻した)ロジックは、「残酷なテレビゲームが青少年犯罪を助長する」という言説にも働いている。そこでもやはり、「殺人を犯した青少年がこれこれのゲームにはまっていた」という論述が、いつの間にか「このゲームにはまると殺人を犯す」に逆転される。

 それとも、これは記事が単純化しすぎなのであって、実際はもっとまともな研究なのだろうか(そうであったとしても、このような記事になってしまうこと自体が問題なのだが)。

 どうも、疫学は胡散臭いと思っていたのだが、その思いを強くしてしまった。アルコールであれニコチンであれ、「依存症狩り」に躍起になっているように思える。と、焼酎四杯目で酩酊しながら書いてます。