MTV哲学者

 土曜がちゃんと休みなのは久しぶりかも。明日は日曜出勤だが。

 というわけで、

スラヴォイ・ジジェク (シリーズ現代思想ガイドブック)

スラヴォイ・ジジェク (シリーズ現代思想ガイドブック)

 献本を頂いていたのを、読む。たいへん分かりやすい。乾いた砂に水がしみこむように、一日の仕事の後の一杯目のビールのように、するすると入ってくる。原著が明快であることも一因だろうが、訳がダメだとこうは行かない。

 ジジェク「について」語ることはかなりの困難を伴う。私自身も一年ほど前に、ジジェクを主題にしゃべったことがあり、たいそう難しかった記憶がある。というのは、ジジェクの理論を崇高化して、深遠なる読解を行っても、また逆にジジェクを軽薄な思想家だと切り捨てても(両方行われていると思うが)、どうしても不満というか余剰が残るようなものの書き方を、ジジェクはしているからだろう。

 一方、ジジェクの言説戦略をモデルにしてうまくやっている、内田樹のような人もいる。ジジェクを訳したり、ジジェクについて論じたりするよりはるかにジジェクの「有用性」を体現した例かもしれない。

 この本の前半では、そのような困難さに出会うことはない。非常に明快な「まとめ」だから。この前半部分だけでも所有するに値すると思うが(ただ、このシリーズの欠点はサイズの割に価格が高めなこと)。

 ただ、最後の「ジジェク以後」の部分はやはり歯切れが悪くなる。特に結論部分、ジジェクと「理論ジャンキー」(「理論」を文化商品として消費する人たち)と結びつける部分、これは必要ないんじゃないかと思う。そういう見方があり得て、それが魅力的なのは分かるが。