猫の逆襲〜『ARGYLLE/アーガイル』(2024)

『枯れ葉』『落下の解剖学』と、犬映画の攻勢が強まっていた昨今ですが、ついに猫映画の逆襲です。というわけで『アーガイル』。

キングスマン』シリーズのスピンオフですが、私は本シリーズの方は一作目はとても好きなのですがその後はぱっとしないな、と思っていました。ですがこれはいい。複雑だけどもバランスのとれたプロット構成と、バカバカしい設定や展開が絶妙に混ざり合って最終的にはスカッとさせてくれるのは、『キングスマン』第一作を見た時の感覚。以下、猛烈にネタバレです。観る予定の人は絶対に読まないでください。

物語は、スパイ小説作家のエリー・コンウェイが、彼女『アーガイル』シリーズが実際に存在するスパイ組織と陰謀組織に酷似していたために陰謀組織に命を狙われる、というところから始まりますが、その後フィクションと現実が入り交じりつつ新たな真実が二転三転して現れ、最終的にエリーは元二重スパイであり、任務中に重症を負って記憶喪失となった際に陰謀組織ディヴィジョンに洗脳され、作家としての別の人生の記憶を植えつけられていたということが明らかになります。『アーガイル』シリーズは未来予知ではなく、エリー(エージェント名はR. カイル=アーカイル)の過去の記憶に基づくものだったというオチ。

エリーの作中のエージェント・アーガイルはヘンリー・カヴィルが演じるマッチョなハンサムなわけですが、それはエリーが自分の姿を移し替えたものだったわけです。そして序盤からエリーを助けるスパイ、エイダン・ワイルドは、現実にはくたびれたおじさん(でもなんだかんだで強い)なのですが、エリーの作中ではこれまたマッチョなハンサムでアーガイルのバディです。

つまり、あれです、エリーは腐女子なわけです。いや、腐女子とラベルを貼って済ますべきではないかもしれない複雑な性的アンデンティティと性指向がこの映画を駆動している部分はあったのかなと。

ビートルズの「新曲」、'Now and Then'の使われ方、とても効果的でした。この映画のために作られた曲みたい。

で、猫ですが、良かったんですが、ちょっと扱いがハラハラする部分も。