Purely Belter

シーズンチケット [DVD]

　模擬授業で『ベッカムに恋して』を扱うなら、と、「現代イギリス社会とフットボール」シリーズ。

　原題はPurely Belter（もう最高！）というのだが、これは主人公のジェリーが、父とフットボール観戦をした時のミルクたっぷりの紅茶の味を形容する言葉（だが実は……というのはネタバレになるので書きませんが）。

　しかし、主人公の家族は現在、暴力夫（父）から逃げ回り、おそらく社会保障に頼って暮らしながら、主人公自身も高校には行かずに酒・煙草・薬・万引きの生活。夢見るはニューカッスル・ユナイテッドのシーズンチケット。友人のスーエルと一緒に金を貯め、来シーズンのチケットを入手しようと奔走する。

　という説明だけでは重い感じを想像されるかもしれないが、主人公の環境はあくまでユーモアと距離感でくるんで軽めにしてある。結末も、何にも解決してなくて、客観的には二人の未来は真っ暗なのだが、ご都合主義的にハッピーエンド。

　ほぼ同じプロットで「重いヴァージョン」もできそう。その場合のキャッチコピーは「彼が望んだのは、たった一枚のチケットだった」なんて感じか。ただそれはないものねだり。主人公二人の友情が良い。