1984 Now

 そうそう、すでに先週の話。

 とある幼稚園の見学に行ってみました。事前情報では結構「お受験」に振った幼稚園らしい。

 でもまあ見学日なんだからと子供は普段着、親は一応襟のついている衣服を着て(でも下はジーンズ)行ったら、他のみなさんは、親はスーツにネクタイ、子供も「入学式かよ!」とツッコミを入れたくなるような服装をしていらっしゃって、とりあえず浮きまくりました。

 教室の見学。塗り絵をやっている模様。それを見て唖然とする。四角が三等分されている幾何学模様に、「正しい色」を「はみ出さない」ように、「均一に」塗るというお題。それは本当に、何の意味も持たない幾何学模様というか四角であって、それでも園児たちはじっと座って黙々と四角に正しい色をはみ出さないように均一に塗っている。みごとに、同じ正しい色ではみ出さないように均一に塗られた三等分された四角形が出来上がっていく。

 ちょっと目眩を覚えながら別の部屋を覗いたら、園児たちの描いたカタツムリの絵が飾ってある。再び目眩。20枚くらいあっただろうか、そのカタツムリたちがみごとに同じ形、同じ色で正確に描かれている。鳥肌。

 「ない!ない!これは、ない!」と、身体が叫ぶ。

 いやしかし、正しい色ではみ出さないように均一に色を塗るといったフォーディズムディシプリンは、ポストフォーディズムの現在においてはむしろラディカルなのかもしれない、などと思いつつも(新)自由主義が骨の髄までしみこんでいる私の身体はやはり「ない!」と叫ぶわけでありました。やっぱり、せめて幼稚園の間くらい、好きな色で野蛮に塗りたくり、泥だらけになって遊んでほしいよなあ、と。