- 出版社/メーカー: ジェネオン エンタテインメント
- 発売日: 2007/07/06
- メディア: DVD
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確かに「衝撃的」だし、例えば『闇の奥』を読む(学生に読ませる)時に、一緒に見せちゃったりしたら効果は高かろう。
しかし、この映画はなぜ「グローバリゼーション」をキーワード、もしくは悪く言えば宣伝文句にするのだろう。ここにあるのは、グローバリゼーションの問題というよりは、単なる南北問題ではないのか。それから、ナイルパーチによる「好況」に沸く町の貧困、ストリートチルドレン、娼婦たちなど、確かに目を覆いたくなるのだが、それはナイルパーチによってのみ引きおこされたわけではない(それが要因のひとつだとしても、「原因」ではない)。ナイルパーチはこの悲惨な状況全体の一部として扱われるべきところを、センセーショナリズムに傾いてしまい、あらぬ誤解(ナイルパーチの不買運動などの、的外れな反応)を引きおこしてしまうであろう点が、残念なドキュメンタリーである。
それから、ナイルパーチをヨーロッパなどに運ぶ貨物機が、来るときに武器を密輸しているのではないかという質問を、インタヴュアーはしつこくする。取材を受けた人たちは、本当に知らないか、なぜそんな事を聞くのか分からない、といった風情で、問題をどうしても兵器の密輸に結びつけたいという意図が空回りしてしまっている印象。これも残念。
要は矛盾があるならそれを矛盾として提示すればよいところを、「原因」を中心に物語を組織化したいという欲望に負けてしまっているのではないかと思うのだ。