石黒さん

 昨日は本務校の語学研究室の例会で、「新自由主義」話。わたしは、カズオ・イシグロ日の名残り』をネタに、新自由主義の文化の問題点を総ざらい、という試みをしてみました。即興性・エンターテイメント性を心がけて、それはある程度うまくいったでしょうか。ポストフォーディズム的パフォーマンスでポストフォーディズムを語る。時間配分むちゃくちゃになってご迷惑おかけしましたが。

 主人公スティーヴンスの「労働倫理」はポストフォーディズム的であるが、それを指摘しただけでは作品のイデオロギーをなぞるだけなので、ジェイムソンを援用しつつ作品の文化形式に後期資本主義的な部分が見いだせないか、ということで、要するにこの作品ってポストモダンですという話でもあるのだが、そこにかかわる「イングリッシュネス」の問題がこの作品独特だということでしょうか。いわゆるグローカリゼーションというやつですね。

 そこまで到達できなかったのだが、前半の「労働倫理」――生産様式の水準を隠蔽するものとしての労働倫理――こそが、「イングリッシュ」な文化として提示されていること、これが重要なんだけど、うまくまとまらなそうなので先送りフォルダに。いやしかし、この先またイシグロを扱うことがあるのかどうかも分かりませんが。

 いや、『わたしを離さないで』の映画版が公開されるのだから、この作品も一度やらないと。SFとして読むかな。